靴磨きに革靴用クリーナーはいる?いらない?両論を踏まえて考察してみた

靴磨きに革靴用クリーナーはいる?いらない?両論を踏まえて考察してみた

革靴に付着したホコリや汚れ、古いクリームを落としてくれるクリーナー(リムーバー)。靴磨きに欠かせないシューケア用品として紹介されることが多いです。

ただ、このクリーナー、靴磨き界隈では、ちょっとした争いがあります。

いわゆる「クリーナー推奨派と不要派の争い」です。

靴磨き界隈(どこ?)では、「シューキーパー不要論」などと並んで争いのある事案の一つではないかと勝手に思っています。

本記事では、「革靴ガチ勢」や「業界のプロ」ではないけど、一応、仕事で約30年ほど革靴を履いてきた「ほどほど勢」のサラリーマンがクリーナーいる?いらない?問題を考察してみました。

革靴用のクリーナーの購入を考えているけど、不要論を見てどうしようか迷っている方はぜひご覧ください。

なお、本来、ブログ記事は結論ファーストで書くべきだと思いますが、一応、考察記事ということで結論は最後に書いてます。

考察はどうでもいいから先に結論を知りたいという方は、以下からジャンプしてください。

【この記事を書いた人】

みたらしとーさん
みたらしとーさん

革靴歴約30年のサラリーマンが解説します。

革靴用クリーナー不要派の意見

クリーナー不要派の意見jpg

クリーナー不要派の意見で多いのは、革靴用クリーナーを使うと革を傷めてしまうということ。

確かに、一般的な革靴用のクリーナーには有機溶剤界面活性剤が入っているので、使いすぎてしまうと革を傷めてしまう可能性がありそうです。

有機溶剤はシンナーみたいなものですし、界面活性剤は石鹸や洗剤と同じ成分なので、革には悪そうですよね……。

実際、日本の有名なシューズブランドであるスコッチグレインでもクリーナーの使用は推奨していません。

(お手入れには)クリーナー、汚れ落とし、リキッド(液体靴墨)はお勧めしておりません。

出典:スコッチグレイン公式サイト ()内引用者

また、お手入れの際に新しい靴クリームを入れると、その溶剤で古いクリームが溶けて拭き取られ、新旧のクリームが順次入れ替わるので、あえてクリーナーを使う必要はないという考えもあります。

(なぜ古いクリームが落ちるのか?)

油性なら油性、水性なら水性のマジックを使って書いてある文字を消せる…(中略)…それと同様。もちろんワックスでワックスを落とすことも可能です。

松室真一郎氏(シューシャイナー)談『MEN’SEX特別編 最高級靴読本(究極メンテナンス編)』26頁 (世界文社,2017.6)

【クリーナー不要派の意見まとめ】

  • クリーナーを使いすぎると革を痛めるから不要
  • 新しいクリームの溶剤で古いクリームを落とせるので不要
  • そもそも古いクリームを落とさなければならないほど、クリームを使うのがダメ。
  • クリーナーを使うとシューケアの工程が多くなる。なるべく省くべき
  • シューケアメーカーが売上を上げたいから推奨しているだけ

確かに、不要派の意見も一理ありますね。陰謀論的なのもありますけど……。

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革靴用クリーナー推奨派の意見

クリーナー推奨派の意見-jpg

推奨派の意見としては、古くなったクリームやワックスを落とさずにしておくと、革が呼吸できずシミやひび割れなどのトラブルが発生しやすくなるというものが多いです。

靴磨きは女性の化粧と一緒。やったら洗顔しないわけにはいかないし、その後のケアも重要なんです。

丸谷誠氏(ボールワークス代表)談『MEN’SEX特別編 最高級靴読本(究極メンテナンス編)』33頁 (世界文社,2017.6)

確かに、新しいクリームですべてきれいに取り除くのは難しいような……。

(靴磨きに)大事なのは何を塗るかではなく、最低でも半年に一度はワックスを落として保湿すること

「靴と上手に付き合うための基礎知識Q&A」『MEN’SEX特別編 最高級靴読本(究極メンテナンス編)』54頁 (世界文社,2017.6) カッコ内引用者

やはり、定期的に古いクリームやワックスを落として「すっぴん」状態にした方が革には良さそうですね。

また、「クリーナーは革を傷める」問題も、最近は革を傷めにくいタイプが多く販売されており問題ないという意見もありました。

ひと昔前は選択肢が少なかったクリーナーだが、いまは多くの商品が登場し、汚れ落とし力も向上している。…(中略)…(有機溶剤などの)配合量を工夫するなどして以前に比べて革を傷めにくいタイプのものも増えてきた。

長谷川裕也著 『続・靴磨きの本』33頁(亜紀書房,2020.10.14) カッコ内引用者

(クリーナは)どれを選ぶにせよ、必要以上にゴシゴシ用いると摩擦で革を痛めてしまうので、…(中略)…軽くサッと拭う程度で、効果は十分に発揮されます。

飯野高広著『紳士靴を嗜む』171頁(朝日新聞出版,2010.6.30) カッコ内引用者

【クリーナー推奨派の意見まとめ】

  • 定期的に古いクリームやワックスを落として「すっぴん」状態にした方が革には良い
  • 革を傷めにくいタイプのクリーナーも多いので使っても問題ない
  • 使い方さえ間違えなければ、靴に効果はある
  • 半年に一度はワックスをしっかり落として、保湿することが重要

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海外の専門家の意見

海外の専門家の意見-jpg

海外の専門家の意見も確認してみました。

海外の有名な靴磨きの専門家ジャスティン・フィッツパトリック氏のブログでは、クリーナーが不要という言葉はないものの、シューケアに必要なリストにクリーナーはありませんでした。

靴のお手入れガイド

シューツリー、シューズバック、レザーローション、シューポリッシュ、古いTシャツ、黒のナイロン、馬毛・山羊毛・ヤク毛ブラシ、エッジドレッシング

Justin FitzPatrick,「The Shoe Snob Blog」.Shoe Care Guide – Why Is It Important

同氏のブログのコメント欄も確認しましたが、読者からもクリーナーを使うべきという意見はなく、ブラシやレザーローションを使う方法が一般的のようでした。

一方、オランダの「the SHOE CARE SHOP」では、靴のお手入れガイドの中で、年に一度の徹底したクリーニングが推奨されています。

Step 1.
Deep cleaning & Removing old shoe polish

Begin by removing any dirt, dust and sand from the shoes with a brush. Afterwards apply a little Saphir Renomat to a cotton cloth and apply on a discrete part of the shoe to test whether the Renomat has the desired effect. (We have used Renomat on thousands of shoes and never really had issues, but it is better to be safe than sorry). After the test rub the shoes with Renomat to remove all old shoe polish. Usually around two full passess with the Renomat is sufficient to remove any dried up waxes and creams.

訳:まず、ブラシで靴の汚れやほこり、砂を取り除く。その後、綿布にサフィール・レノマットを少量含ませ、靴の目立たない部分に塗布し、レノマットの効果を試す。(これまで何千足もの靴にレノマットを使用してきたが、特に問題はなかったが、転ばぬ先の杖である)。テスト後、レノマットで靴をこすり、古い靴墨を取り除く。乾燥したワックスやクリームを落とすには、レノマットで2回こするだけで十分です。

the SHOE CARE SHOP」,Shoe care guide (advanced) ※訳は「Deep L」で翻訳

上記以外のサイトも見てみましたが、様々な意見があって、明確にどちらが正しいか確認できませんでした。

※私、英語は全くできません(キッパリ)。情報を探せてないだけの可能性も高いので、もし参考になるサイトがあったら教えてください(汗)

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専門家の意見を踏まえて考察

いろんな専門家の意見やネットの情報などを踏まえて、思うことは以下の2つです。

  • 前提が同じなら、そこまで考えは違わない(ハズ)
  • どっちにしろ、直ちに革がどうにかなるわけではない(ハズ)

前提が同じならそこまで考えは違わない(ハズ)

この問題は、クリーナー使う・使わない以前にシューケア方法の前提や条件がそれぞれで違うので、かみ合っていないのでは?と思いました。

クリーナーを使うか使わないかという「点」で見るのではなく、シューケアという「線」でみれば、一部の原理主義者は別として、実は推奨派も不要派も考えはそんなに変わらないのではないでしょうか。

例えば、シューケアで「靴クリームはそんなに使わない」「普段はレザーローションとブラッシングだけ」という靴であれば、推奨派の方も「それならクリーナーは不要だな」と考えると思います。

レザーローションとローファー-jpg

一方で、せっかくだから「ワックスやクリームでガッツリ光らせたい」という方の靴なら、不要派だって「それなら定期的にクリーナーを使ってしっかり落とした方がよい」って思うのでは。

まあ、そうなってくると今度は、「クリーナーで落とさなければならないぐらい靴クリームやワックスを使うべきではない」という議論も出てくるかもですが、今回はここまでということで……。

クリーナーでお手入れ中の革靴-jpg

結局のところ、シューケアに対しての考え方や革靴に対する熟練度、許容度によるのかなと……。

初心者の方は、クリーナーを使う・使わないは革靴に対する考え方や普段のお手入れ方法で決めるべきと思います。

革靴に対する考え方そこまでシューケアに手間はかけたくないせっかくなのでピカピカにしたい!
お手入れ方法レザーローションで保革
普段はブラッシングだけ
定期的にクリームとワックスでしっかりお手入れ
クリーナーは?不要必要

どっちにしろ、直ちに革靴がどうにかなるわけではない(ハズ)

ここにきて身も蓋もないですが、一応、約30年仕事で革靴を履いてきた経験から言えることは、革靴はそんなに弱くないということです(高級靴は知らない)。

例えば、”仮に” 不要派がいうようにクリーナーが革に悪いものだったとして、そのクリーナーを使ってしまったからといって、直ちに革がどうにかなることはないです(高級靴は知らない)。

同様に、推奨派がいうようにクリーナーを使わないことで古いクリームが蓄積したとしても、いきなり短期間で大きく劣化することはありません(高級靴は知らない)。

お手入れ後の革靴(シャインオアレイン)-jpg

クリーナーを使っても使わなくても、「愛着をもって、しっかりお手入れしていれば」その違いは誤差の範囲だと思います。

「は?長い目で見た場合で言ってんだよ」と怒られそうですが、一部のマニア以外で、影響が出るぐらいまで長く履けるかなと。

結局、そこまで行く前に革靴に飽きたり、お手入れをサボって別の理由でダメにしたり、ソールがすり減って履けなくなったり(リペア代もったいなくて修理しない人多いし)。

シューフィッターこまつさん曰く、オールソールを経験する人は100人に1人だそうです。

ということで、私の考えは

「好ぎにすればいいっきゃ」

※投げやり津軽弁

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まとめ|革靴用クリーナーは必要に応じて適切に使うべし

本記事では、革靴界隈(だからどこ?)で争いのあるクリーナーいる?いらない?問題について考察してみました。

クリーナーを使うか使わないかという「点」で見るのではなく、シューケアという「線」でみれば、一部の原理主義者は別として、実は考え方はそんなに違わないのかなと思います。

そして、どっちにしろ革靴はそんなに弱くないので、直ちにどうにかなるわけではないということです。

ということで、初心者の方はいろいろ試してみて、自分に合う方法を選べばよいと思います。

革靴業界が斜陽産業といわれている中で、せっかく革靴に興味を持って好きになった者同士です。

そんな些末なことで争わず、「ガチ勢」も「ほどほど勢」も「初心者」も「にわか」も、仲良く業界を盛り上げていければよいですね。

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クリーナーを用途別に解説した記事です。推奨派に一票という方はぜひご覧ください。

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