革靴を長く履いているとどうしても付いてしまう汚れやニオイ。普通のお手入れで解消できない場合は、丸洗いしてしまうのがかなり効果的です。
以前、不注意で持っている革靴にカビを生やしてしまい、モールドクリーナーで除去したことがあります。
その時の記事はこちら↓
>>【革靴のカビの落し方】実際にやってみた簡単除去方法…おすすめケア用品も紹介
実はそれ以来、その靴がなんか臭います。すごくイヤなニオイがするという訳ではないのですが、靴を脱ぎ履きするたびにカビ臭がプ〜ンとする感じ。
どうしたものかと思いましたが、ここは一度、丸洗いをしてみることにしました。
この記事では、実際に革靴の丸洗いをしてみて感じたことや注意点、失敗しない洗い方などを解説しています。
革靴を丸洗いしてコンディションを整えたいと考えている方は、ぜひご覧ください。
【この記事を書いた人】
革靴歴約30年のサラリーマンが解説します。
- 『靴磨き知識アドバイザー』
- 革靴は仕事道具。「ガッツリ履いて、しっかりお手入れ」がモットーです。
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革靴は丸洗いしても問題なし
革靴は雨の日用の靴があるように、「革靴=水に弱い」と思われがちです。
でも、革靴の革は、原料の「皮」を製品の「革」に加工する際※、大量の水を使っているため、革自体が水に弱いということはありません。
※「鞣(なめ)し」といいます。
革靴が雨対策を必要とするのは、一緒に汚れも付着したり、濡れたままにすることでカビや塩吹きが生じたりするためです。
革靴の丸洗いは専門家の方も推奨していますよ。
(革靴は)やり方さえ十分気をつければ、服などと同様に…中略…洗ってしまったほうが、コンディションは回復できるものなのです。
飯野高広著『紳士靴を嗜む』186頁(朝日新聞出版,2010.6) ※()内筆者付記
人は1日靴を履くと約コップ1杯分の汗をかくと言われています。革靴をコンディションよく長く履いていくためには、定期的な丸洗いがおすすめです。
革靴の丸洗いは自分でできる
自分で革靴を洗うとなると、ちょっとハードルが高そうに思えます。
私も初めて丸洗いをしたときは、かなりビビリながら革靴をお湯の中に入れましたが、実際にやってみると意外と簡単だなという印象です。
✔特別な革でなければ、比較的簡単に自分で洗うことができます。
10万円以上するような高級革靴でも、自分で洗っている方は多いです。
丸洗いできない(自分で洗わない方がよい)革靴
ただし、どんな革靴も自分で丸洗いできるわけではないので注意が必要です。
丸洗いできない(自分で洗わない方がよい)革靴
アニリン仕上げの革靴
アニリン仕上げの革は、水性の染料を使って繊細に染色しています。耐水性が低く水染みや色落ちしやすいので、自分では洗わない方が無難です。
エナメル加工の革靴
エナメル加工の革は、革表面を特殊な樹脂で加工して光沢を出しています。丸洗いをすると光沢が失われるおそれがあるので丸洗いは控えたほうがよいとされます。
コードバンの靴
馬のお尻部分の皮を使っているコードバンは、革のダイヤモンドともいわれるように独特の光沢があります。丸洗いできないことはないですが、慣れないうちは靴のクリーニング店などのプロに任せた方が無難です。
エキゾチックレザー(ワニなど爬虫類の革)の靴
クロコダイルなどの爬虫類の皮を使っているエキゾチックレザーも水性染料で仕上げた革が多いため(特に高価なもの)、プロに任せたほうが無難です。
油染みの付いた靴
革の種類ではないですが、油染みが付着してしまった靴は水洗いで取ることができないので、この場合もプロにお任せした方がよいです。
あと、スエードのような起毛革は丸洗い自体は可能ですが、専用の洗剤や道具が必要です。
プロに任せるという方法も
- 自分にとって大事な靴で失敗したくない
- 自分で丸洗いする自信がない
- なんか面倒
比較的簡単な靴の丸洗いですが、慣れない方にはハードルが高いのも事実。そんなときは、無理せず靴専門のクリーニング店(プロ)にお任せした方が安心です。
今は数千円で、しかもネットで完結できる業者が多くあります。
例えば、靴クリーニング専門店の「Kutoon Wash(クトゥーン ウォッシュ)」では、1足4千円ちょっと(送料込み)で、靴の丸洗いを頼むことができます。
>>靴クリーニング専門店【Kutoon Wash】の詳細を見てみる【あわせて読みたい】
Kutoon Wash(クトゥーン ウォッシュ)のレビュー記事はこちらをご覧ください。
>>【体験レビュー】「Kutoon Wash(クトゥーンウォッシュ)」で革靴を丸洗いしてみた
実際に何足か靴の宅配クリーニングに頼んでみて、業者ごとに比較、検証した記事はこちらです。
革靴を丸洗いするタイミング
革靴を洗うタイミングですが、専門家の中でも「半年から1年に1回」を推奨する意見や、革に負担がかかるとして「数年に1回で十分」や「最終手段」という意見があり、見解が別れます。
洗えるならシーズンごとに洗ってしまうのも手ですが、慣れないとそこまで頻繁にできません。
実際的には、「トラブルが発生したら」、「汚れや匂いなどが気になってきたら」というタイミングでよいのではないでしょうか。
✔革靴を洗うタイミング
- 雨に濡れて水染みや塩吹きが出た
- 湿気などでカビが生えた
- ハードに履いて嫌なニオイが出てきた
- 履きジワが深くなった
このような症状が出てきたら、放置して悪化する前にすぐに丸洗いすることをオススメします。
革靴の丸洗いに必要な道具
✔丸洗いで使うもの
サドルソープ(革靴用洗剤)
サドルソープは、革靴専用の石鹸です。汚れを落とす成分だけでなく、乳化性クリームと同様の成分も含まれていて革を保革することもできます。
普通のボディソープでも問題ないですが、サドルソープの方が保革できるのでおすすめです。
1回使ったあとのサドルソープです。まだまだ相当残っているので、一度購入したら次購入する必要がないぐらいコスパはよいと思います。
クリーニング用スポンジ
専用のクリーニング用スポンジも販売されていますが、今回は100円均一で売っている、食器洗い用スポンジの中身を取り出して使いました。
これでも十分ですが、M.モゥブレィから販売されている専用のスポンジは食物繊維で作られているのでソフトで弾力があり、革を痛めず汚れを落とせます。
靴磨き用のケア用品
丸洗いして、靴を乾かしたら、普段のお手入れと同じ工程を行いますので、靴磨きに必要なケア用品も必要です。
それぞれの使い道や用途はこちらを参考にしてください↓
【あわせて読みたい】
>>【休日の靴磨き】お手入れの手順と方法を革靴歴約25年のサラリーマンが解説
革靴の洗い方と手順
✔革靴丸洗いの手順
ふぅ〜。なかなか長い道のりですね。ただ、作業自体はそこまで大変ではないので、ゆっくりやっていきましょう。
それでは、革靴を丸洗いしていきます。
① 靴紐(シューレース)を取る
靴紐(シューレース)を取ります。
② 馬毛ブラシでホコリを落とす
普通の靴磨きのときのように、馬毛ブラシでブラッシングをしてホコリを落とします。
③ 靴用クリーナーで汚れや古いクリームを取り除く
靴の表面にクリームやワックスなどの油分が残っていると、丸洗いする際に水を弾いてしまうので、クリーナーでしっかり除去します。
今回はクリーナーでは定番のM.モゥブレィ ステインリムーバーを使いました。
革靴用クリーナーで革靴の表面をすっぴん状態にします。
洗面台を使って洗うので、アウトソールもクリーナーでキレイにしました。
④お湯の中に靴を入れる
大きなバケツなどに40℃ぐらいのお湯を張ります。
冷たいと汚れが落ちにくいですし、熱すぎると接着剤などが溶け出してしまうので40℃ぐらいがちょうど良い温度です。
今回は洗面台で洗います(使用後ちゃんとキレイにするという妻からの条件のもと…)。
お湯の中に革靴を投入します。
スポンジで革靴全体を濡らして、全体が濡れたらお湯に沈めて浸します。
⑤スポンジにサドルソープを付けて全体を洗う
濡らしたスポンジにサドルソープを適量取って泡立てます。
しっかり泡立てます。
泡を靴の表面にのせて、スポンジで洗っていきます。
靴の中にもスポンジを入れ結構強めに洗います。汚れがヒドイときは歯ブラシや専用のブラシを使ってゴシゴシ洗いましょう。
靴を洗ったあとのお湯です。お湯の色がスゴイことになっています……。
⑥お湯ですすいで、タオルで水気を取る
サドルソープでしっかり洗ったら、お湯ですすいで泡を落とします。
サドルソープは保革成分が入っているので、軽く泡を落とす程度で大丈夫です(キレイにすすぎたくなりますが……)。
タオルでしっかり水気を拭き取ります。
⑦新聞紙を中に入れて風通しのよい日陰に置いて陰干し
靴の中に新聞紙を入れて、水を染み込ませます。多めにグイグイ入れましょう。
風通しの良い日陰に置いて陰干しします。
直射日光に当てたり、ドライヤーで急に乾かしたりすると、革が急に乾いてひび割れを起こしてしまうので絶対にやめてください。
この靴はラバーソールなので問題ないですが、レザーソールの場合は斜めに立てかけるように置かないと、ソール部分がカビてしまうことも。
風通しを良くしてカビを防ぎます。
⑧半乾きの状態でデリケートクリームで保湿
3〜4時間ぐらいすると、アッパーのつま先部分が乾いてきます。
完全に乾ききるまで何もしないと革が固くなってしまうので、一度デリケートクリームで保湿します。
M.モゥブレィのデリケートクリームを靴全体に塗って保湿を行います。
全体にデリケートクリームを塗った状態。まだ半乾きです。
再度、外で陰干しです。
こまめに様子をみて、乾いてきたなと思ったら、もう1回ぐらいデリケートクリームを入れます。
【あわせて読みたい】
>>【ぷるんと革に潤い】M.モゥブレィ デリケートクリームをレビュー
⑨シューキーパーを入れてさらに陰干し
1日置きましたが、まだ乾きません(なぜか左足の中が全然乾かない……)。
型崩れを防ぐためシューキーパーを入れて乾かします。
木製のシューキーパーでもよいですが、乾かす作業なので風通しがよいプラスチック製のシューキーパーがおすすめです。
夜になったので、室内干しです。換気扇の下に置きました。
⑩完全に乾いたら、レーダーオイルで油分補給(省略可)
今回は2日間の陰干しで乾きました(3〜4日ぐらいかかる場合も)。
このまま乳化性クリームを塗って仕上げをしてもよいですが、失われた油分をしっかり補給したいので、もうひと手間加えます。
革に油分や柔軟性を与えることができる、皮革製品の万能薬タピールのレーダーオイルです。
レーダーオイルを靴全体に塗布して浸透させます(ただし、塗りすぎると油分過多の状態になるので注意が必要です)。
【あわせて読みたい】
⑪一晩おいてオイルを浸透させる(省略可)
レーダーオイルが革にしっかり浸透するように、さらに一晩おきます。
丸洗いと油分補給のおかげで、革がモチモチです。
⑫乳化性クリームで保革、ツヤ出し
最後に通常の靴磨きと同様に乳化性クリームを塗布して、保革とツヤ出しを行います。
今回はM.モゥブレィのシュークリームジャー(ダークブラウン)を塗布します。
ペネトレイトブラシをつかってコバの部分にもしっかりクリームを入れます。
乳化性クリームを全体に塗布したら、豚毛ブラシでブラッシングしてクリームを革に馴染ませます。
いらない布かストッキングで乾拭きして、余計なクリームを拭き取ります。
靴紐(シューレース)を付けて終了です。
お疲れさまでした!
カビのニオイはまったく無くなりました。
なんとなく革の風合いも良くなったような気がします。
革靴丸洗いでの失敗談・注意したいこと
今回に限りませんが、革靴の丸洗いで難しいと感じるのが「乾かす工程」です。
今回はなぜか左側のインソールが全然乾かないので、ずっと陰干しを続けていたのですが、アッパー部分はすぐに乾いてしまい、少し革が固くなってしまいました。
レーダーオイルを使い油分補給したので固さはなんとか解消しましたが、乾かす工程は気を付ける必要があります。
✔乾かす工程で注意したいこと
- その時の天候によって乾き方が違う
- 靴の部位によって乾くスピードが違う
その時の天候によって乾き方が違う
外で陰干しする場合ですが、その時の天気や風向きなどで、乾くスピードが違うので注意が必要です。
今回、1日目より2日目の方が風が強く、思ったよりアッパーの乾きが早くなって焦ったことがありました。
油断して放って置くと保湿前に完全に乾いてしまい、革が固くなってしまうので、こまめな確認が必要です。
部位によって乾くスピードが違う
アッパー部分は比較的早く乾くのに対して、インソール(靴の内側)部分は乾きにくい上に、乾いたかどうかが分かりづらいです。
今回は慎重に乾かしたので大丈夫でしたが、アッパー部分が乾いたのを全体が乾いたと思い込んで陰干しをやめてしまうと、カビを発生させるおそれがあります。
インソール部分は入念に乾かしましょう。
靴をキレイにするために丸洗いしたのに、カビを生やしてしまったら意味がありません……。
カビが生えた革靴を丸洗いしてみた|まとめ
この記事では、カビの生えて少し臭ってしまった革靴を丸洗いしてみました。
少しハードルが高そうな革靴の丸洗いですが、比較的簡単にすることができます。
ただ、革靴の丸洗いで難しいと感じるのが「乾かす工程」です。
✔乾かす工程で注意したいこと
- その時の天候によって乾き方が違う
- 靴の部位によって乾くスピードが違う
せっかく購入した革靴ですので、定期的に丸洗いをしてニオイや汚れを防いで末永く履いていきましょう!
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とはいえ、自分で革靴を丸洗いするのはちょっと面倒という方には、靴の宅配クリーニングがおすすめです。
靴のニオイにお困りであれば、パウダー式消臭スプレーがおすすめです。
靴のカビを除去したい場合は、こちらの記事を参考にしてみてください。
>>【革靴のカビの落し方】実際にやってみた簡単除去方法…おすすめケア用品も紹介
革靴を末永く履くためのメンテナンスを解説した記事です。